ほうれんそうの大誤解

こんにちは。今回は「ほうれんそう」についてお話したします。ほうれんそうといっても、これからの季節に旬を迎える美味しい緑黄色野菜の事ではありません。「報告、連絡、相談」を意味するビジネスで用いられている考え方のことです。一度は聞いたことがあると思われますこの「ほうれんそう」、皆様はどのようなものと理解していらっしゃるでしょうか。一般的には「部下が上司への連絡方法に関するマニュアル」と言われていますが、それらの常識は提唱者の意図に尽く反した全くの誤解であるのです。では本来の「ほうれんそう」とはどういったものであったか。提唱から30年以上経った今紐解いていきましょう。
 「ほうれんそう」の概念は、山種証券(現SMBCフレンド証券)の社長であった山崎富治氏が1986年に出版した著書「ほうれんそうが会社を強くする」にて広く知れ渡りました。この本によれば「ほうれんそう」は「管理職がどのような意見でも聞き入れ、問題解決に取り組むことで、末端の社員や組織に来て間もない中途採用者でも意見提案が自然と生じる会社になる」ことを狙った方法であると書かれています。つまりほうれんそうとは、「職場環境の改善と良好な人間関係構築による強固な組織を作る手段」であって「上司が部下に否が応でも情報伝達をさせる手段」ではないということです。上司が口やかましく「ほうれんそうは大事だ。やれ」などと言っているようでは全く機能していないと言えるのです。この話も、私が普段から懸念している「手段の目的化」の典型的な事例であると考えます。
 上記でほうれんそうとは職場環境の改善による良好な人間関係と組織を作る手段」と述べましたが、読者の皆様の中に「じゃあ職場の雰囲気よくするなら「ほうれんそう」にこだわる必要ないんじゃないの?」と思った方はいらっしゃるでしょうか?私はそれもまたありだと考えます。ほうれんそうの提唱から30年、世の中は当時からは想像も付かないほど変化しています。またほうれんそうは証券会社で行われた方法です。業種によってもほうれんそうがうまく機能しないことは十分考えられます。小売業者の「無印良品」では、ほうれんそうは成果がでないと判断し、社内では一切行われていないそうです。重要なのは職場環境の改善による強い組織作りであり、それが実現できるならば手段は問題ではないのです。
 これまで上司が本来自分の職務である会社環境の改善を部下に押し付けるために誤用されてきた「ほうれんそう」ですが、今回の話で誤解が解消されたことを願います。某鋼鉄メーカーや自動車メーカーの二の舞にならぬよう「自分は気軽に話をしてもらえる人間だろうか?」と鑑みていただければ幸いです。

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