夏の思い出

それはある暑い日のこと。

奴らに連れられた少年はこれから起きることを予想するなど、それには幼すぎたのだ。

目が覚めた時にはベッドの上。青白い手術衣を纏う大人たちに囲まれ、今ある現状と、気味が悪い目眩で少年は人生で未だ経験の少ない混乱を覚えた。

額には大きなガーゼが貼られる。

少年は額に大きな傷を負い、救急車で運ばれていたのである。

プールサイドではしゃいでいた少年はウォータースライダーの柱に激突し、気づいたら病院の中だったというわけだ。

意識はある。意識があってもそれを理解できるほど大人でもない。

そこに鏡がないのだから、尚更だろう。

しかし、少年はある決意をしたのだ。

『プールサイドでは、2度と走らない』

«
»